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傷病手当金

傷病手当金と失業保険は両方もらえる?
順番と受給期間延長のやり方

公開日 ・ 最終更新日 ・ 読む時間 約5分

執筆: やめどきナビ編集部

30秒でわかる結論

  • 原則として同じ期間に両方は受け取れない(個別判断)。傷病手当金は「働けない人」、失業保険は「働ける人」への給付で、前提が正反対だから
  • ただし「働けない間は傷病手当金 → 回復したら失業保険」と時系列で切り替えるのは、制度が正式に想定している正規の方法
  • 切り替えのカギは、失業保険の受給期間延長(=もらう権利をとっておく手続き)の申請(働けない状態が30日続いたら申請できる)。これを忘れると失業保険をもらう権利が消えることがある
  • 同じ期間について、一方に「働けない」、もう一方に「働ける」と虚偽の申告をして両方を受け取ると不正受給(最大3倍返しのペナルティ)。要件を満たすかは保険者とハローワークがそれぞれ判断する(一律の併給禁止規定はない)
お金の流れ傷病手当金 → 失業保険と、順番に受け取る流れの目安です。
  1. 休職中(在職中)傷病手当金を受ける退職日の時点で支給の条件(待期3日がすんでいて働けない状態)を満たしていることが大事。振込が退職前に間に合っていなくてもよい。¥ 給料の約2/3
  2. 退職日継続給付で傷病手当金がつづく条件を満たせば辞めた後も受け取れます。
  3. 退職30日後〜失業保険の受給期間延長を申請もらう権利をとっておく手続き。最長3年。
  4. 回復後失業保険に切り替え延長を解除して仕事探しへ。¥ 給料の約50〜80%

※傷病手当金は通算1年6ヶ月まで。重ならないように順番に受け取るのがポイントです。

なぜ同時受給できないのか

2つの給付は、もらうための前提が正反対だからです。

  • 傷病手当金(健康保険): 病気やケガで労務不能(=働けない状態)であることが条件
  • 基本手当=失業保険(雇用保険):働ける状態で、働く気持ちがあり、仕事を探していることが条件

同じ期間について「働けない」と「働ける」の両方が事実であることは通常なく、それぞれの要件を満たすかは保険者とハローワークが個別に判断します。逆に言えば、期間が重ならず、それぞれの制度の要件(雇用保険の加入期間・離職区分・求職活動など)を満たせば、両方の制度を使えます。

正規の切り替え手順(時系列)

うつ病などで休職→退職するケースの標準的な流れです。

  1. 在職中

    傷病手当金の受給を開始(または受けられる状態にしておく)
  2. 退職

    継続給付の3条件(①退職日まで続けて1年以上、健康保険の被保険者である(任意継続・国保・共済組合の期間は数えない) ②退職日の時点で傷病手当金を受けているか、受けられる状態(働けない+待期3日がすんでいる) ③退職日に出勤していない)を満たせば、退職後も傷病手当金を続けて受け取れます
  3. 退職後、働けない状態が30日続いたら

    ハローワークで失業保険の受給期間延長を申請(最長3年延長できます)
  4. 療養に専念

    傷病手当金は支給開始から通算1年6ヶ月まで
  5. 回復し、医師が就労可能(=働ける)と判断

    傷病手当金は終了
  6. ハローワークで延長を解除し、求職申込

    働ける状態になったので、ここから失業保険の手続き
  7. 待期(=もらう前に必ず待つ7日間)を経て基本手当を受給

    給付制限(=自己都合で辞めたときの待ち時間)があるかどうかは、離職理由(=辞めた理由)によって違います。窓口で確認してください

切り替えるタイミングの判断例(3パターン)

切り替えの起点は本人の希望ではなく「医師が就労可能と判断した日」です。2025年4月1日に支給が始まり2025年9月30日に退職した人なら、 傷病手当金を使い切った場合の最終日は2026年9月30日(通算1年6ヶ月)、失業保険の受給期間(延長なし)の最終日も離職翌日から1年の2026年9月30日で同じ日です。

パターン傷病手当金失業保険側の手続き失業手当の初回振込までの日数(傷病手当金の最終対象日の翌日〜初回振込の前日)
A 満了まで働けず、満了後に回復2025年4月1日〜2026年9月30日(使い切る)2025年10月31日以降に延長申請 → 2026年10月5日に解除・求職申込 → 待期2026年10月11日まで → 初回振込2026年11月5日〜2026年11月20日(給付制限なし)約35〜50日
B 満了前に回復(2026年3月1日に就労可能と判断)2025年4月1日〜2026年2月28日(11ヶ月分。残り7ヶ月分は使わない)2026年3月2日に解除・求職申込 → 待期2026年3月8日まで → 初回振込2026年4月2日〜2026年4月17日約32〜47日
C 満了後も働けない2026年9月30日で終了(再支給なし)失業保険は受けられない(働く能力の要件を欠く)。延長を続ければ受給期間は最長2029年9月30日まで両方0円。障害年金・自立支援医療を検討

Bで残り7ヶ月分を惜しんで続けることはできず、一度働ける状態になると再び悪化しても継続給付は再開されません(協会けんぽの公表資料)。 Cの場合は障害年金の検討に入ります。障害年金の障害認定日は原則「初診日から1年6ヶ月を経過した日」で、傷病手当金の支給開始日(待期3日の翌日)とは起算点が別です(通算の中断があればさらにずれます)。 傷病手当金の満了を待たず、初診日を確認したうえで早めに主治医と年金事務所に相談してください。

給付の空白と初回振込までの日数を計算する

パターンAを、シミュレーターと同じ待期7日・給付制限・初回振込の幅(申込から約1〜1.5ヶ月)の考え方で展開し、次の2つの日数を分けて数えます (申込日の置き方だけが違います。ツールは「退職の14日後に申請」と仮定しますが、この記事は延長解除・求職申込日を直接置きます)。 (a)どの給付の対象にもならない日数(傷病手当金の最終対象日の翌日から、失業手当の支給対象が始まる前日=待期満了日まで)と、 (b)失業手当の初回振込までの日数(最終対象日の翌日から初回振込の前日まで)。失業手当は待期満了の翌日から支給対象になりますが、振込は認定日の後なので、(b)は(a)より長くなります。

計算例: 傷病手当金の最終対象日が2026年9月30日の場合

① 傷病手当金の最終対象日 = 2026年9月30日(最後の1ヶ月分は10月に医師の意見をもらって申請)

② 延長解除・求職申込 = 2026年10月5日 → ③ 待期7日 = 〜2026年10月11日(全員支給なし)

④ 給付制限なし(疾病による離職が特定理由離職者と認められた場合): 初回振込のめやす = 申込から約1〜1.5ヶ月後 =2026年11月5日〜2026年11月20日。(a)どの給付の対象にもならない日数 = ①の翌日〜③の待期満了日の 11日、(b)①の翌日から初回振込の前日までの日数 約35〜50日

⑤ 給付制限1ヶ月あり(正当な理由のない自己都合と判定された場合): 制限期間 2026年10月12日〜2026年11月11日 → 初回振込2026年11月20日〜2026年12月5日。(a)給付の対象にならない日数 = ①の翌日〜給付制限の終了日の 42日、(b)初回振込までの日数 約50〜65日

認定日から振込までの日数はハローワークにより異なり、特定理由離職者に当たるかは離職票の離職理由と診断書等をもとにハローワークが判断します。①はこの例では支給期間の満了日(満了前に回復した場合は、医師が就労可能と判断した日の前日)、③は法定の7日、④はハローワークの処理で決まるため、本人が動かせるのは②(働ける状態に回復したら、すぐに求職申込に行く)だけです。求職申込には、働ける状態への回復が別途必要です。

(a)(b)はどちらも「給付の対象期間」を起点にした日数で、実際の入金日とは別です。入金日で見ると次のようになります。

給付対象となる期間申請するタイミング入金のめやす
傷病手当金(最終回)2026年9月30日まで(最後の1ヶ月分)対象期間が終わってから(10月)、医師の意見欄を書いてもらい保険者へ保険者の審査後(申請から入金までの日数は保険者ごとに異なる。申請が遅れた分だけ入金も遅れる)
失業手当(初回)待期満了の翌日 2026年10月12日 〜 初回認定日の前日(給付制限なしの場合)2026年10月5日に求職申込 → 初回認定日に失業の認定2026年11月5日〜2026年11月20日(認定日から数日後)

入金の間隔で見ると、傷病手当金の最終回の入金と失業手当の初回振込のあいだが空きやすく(最終回の申請が遅れると、入金の順番が逆になることもあります)、この間隔は(a)の給付対象の空白(給付制限なしなら11日、給付制限ありなら42日)とは一致しません。 実際に現金が不足するかどうかは、その時点の残高と、この期間に払う家賃・国民健康保険料(または任意継続の保険料)・国民年金保険料・住民税の予定で決まります。月単位で書き出して確認し、傷病手当金の最終回の申請を先延ばしにしないことが現実的な対策です。

最重要ポイント: 受給期間延長を忘れない

失業保険をもらえる期間は、原則として離職日の翌日から1年間です。 療養で1年を過ぎてしまうと、雇用保険に長く入っていた人でも、もらえなくなることがあります。

これを防ぐのが受給期間延長の制度です。 病気やケガで引き続き30日以上働けない場合に申請できます。働けない期間の分(最長3年)、受給期間を延ばせます。

  • 働けない状態が30日過ぎたら早めに申請してください(詳細は下記の解説記事へ)

詳しい要件・必要書類は受給期間延長の解説記事にまとめています。受け取れる金額のめやすは失業手当の計算方法をご覧ください。

協会けんぽ・健保組合・国保で違う手続き

退職後の傷病手当金を払うのは退職時に入っていた保険者です(健康保険法104条「同一の保険者から」)。 退職後に国保や任意継続へ移っても申請先は変わりませんが、保険者の種類で様式・提出先・上乗せの有無が違います。

退職時の加入先提出先事業主(会社)の証明確認しておくこと
協会けんぽ加入していた都道府県支部へ郵送退職日までを含む回は必要。退職日翌日以降だけの回は不要1ヶ月単位(給与締切日ごと)の申請が推奨。法定額のみで上乗せなし
健康保険組合組合へ(様式は組合ごと)同上付加給付(3分の2への上乗せ)の有無を、組合の給付一覧か規約で確認
退職後に国保・任意継続へ変わらない(退職時の保険者)—国保に傷病手当金は原則なく(市区町村の任意給付)、任意継続の資格で新たな支給もないが、継続給付は止まらない

雇用保険側(延長・解除・求職申込)は加入先にかかわらず住所地を管轄するハローワークです。任意継続と国保の保険料は任意継続と国保の比較の記事で前年所得別に計算しています。

必要書類と提出する順番

「傷病手当金の側」と「雇用保険の側」で書類も提出先も別です。時系列で並べます。

  1. 在職中: 傷病手当金支給申請書(初回)を保険者へ

    被保険者記入用2枚・事業主記入用1枚・療養担当者記入用1枚の4枚1組。会社の証明欄は会社が記入します
  2. 退職後10日〜2週間: 離職票-1・2を受け取る

    離職票-2の離職理由欄が疾病による離職になっているか確認。違えばハローワークで異議を申し立てられます
  3. 退職翌日から30日経過後(この例では2025年10月31日以降): 受給期間延長申請書をハローワークへ

    離職票-2・働けない期間が分かる医師の診断書・本人確認書類を添付。郵送・代理人でも提出できます
  4. 延長中: 傷病手当金を1ヶ月ごとに申請

    退職日翌日以降だけの回は事業主記入用が不要。意見欄は期間が終わってから記入してもらいます。請求権は日ごとに2年で時効(健康保険法193条)
  5. 回復: 医師の就労可否証明書をもらい、延長解除+求職申込(同日可)

    持ち物は受給期間延長通知書・離職票-1・2・就労可否証明書・マイナンバー確認書類・写真2枚・本人名義の通帳。 傷病手当金は就労可能と判断された日の前日までを最終回として申請します

「両方同時にもらえる裏技」は本当?

誤解1「医師に『軽作業なら可』と書いてもらえば同時にもらえる」— 原則として成り立ちにくい組み合わせです。失業保険は雇用保険法4条3項の「労働の意思及び能力を有するにもかかわらず、職業に就くことができない状態」、 傷病手当金は健康保険法99条1項の「療養のため労務に服することができないとき」が要件です。傷病手当金の労務不能は従前の業務などを基準に保険者が、基本手当の労働能力はハローワークがそれぞれ個別に判断するため、 一律の併給禁止規定があるわけではありませんが、同じ期間について両方の要件を満たすと認められることは通常ありません。両方に関わる期間があるときは、保険者とハローワークの双方に事実どおり申告して確認してください。 「軽作業なら可」は健康保険側で労務不能でないと判断され得るため、傷病手当金が止まる方向に働きます(2026年9月6日確認)。

誤解2「1年6ヶ月もらい切ると失業保険の日数が減る」— 受給期間延長をしていれば所定給付日数(90〜330日)は減りません。減るのは延長せずに受給期間(離職翌日から1年)を過ぎた場合で、 残りの日数分は受け取れなくなります(雇用保険法20条1項。延長を含め最長4年)。 上の例では2025年10月31日以降に延長申請をしておけば、2026年9月30日に傷病手当金が終わった後でも全日数が対象です。 継続給付の3条件は退職後の傷病手当金の記事に整理しています。

これは不正受給になります(重要な注意)

次のケースはどれも不正受給(=うその申告でお金を受け取ること)にあたり得ます。

  • 実際は働ける状態なのに「労務不能」と偽って傷病手当金を受け続ける
  • 実際は働けない状態なのに「働ける・求職中」と偽って失業手当を受ける
  • 同じ期間について、一方に「働けない」、もう一方に「働ける」と事実と異なる申告をして両方を受け取る

不正受給になるのは「事実と異なる申告」をした場合です。同じ期間についてそれぞれの要件を満たすかどうかは、保険者とハローワークがそれぞれ判断するもので、一律の併給禁止規定があるわけではありません(両方に関わる期間があるときは、双方に事実どおり申告して確認してください)。

注意: 雇用保険の不正受給が発覚した場合、以後の支給停止に加えて、不正に受けた金額の返還命令と、最大でその2倍の金額の納付命令(合計で最大3倍、いわゆる「3倍返し」)の対象となり、悪質な場合は刑事告発もあり得ます。 健康保険側の不正受給も返還等の対象です。

「誰でも数百万円もらえる」といった有料の給付金サポート業者にも注意してください (詳しくは給付金業者の注意点の記事へ)。

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よくある質問

傷病手当金と失業保険は同時にもらえますか?

原則として同じ期間に両方は受け取れません(一律の併給禁止規定はなく、要件を同時に満たすかは保険者とハローワークの個別判断です)。傷病手当金は病気やケガで労務不能(働けない)であることが要件、失業保険(基本手当)は働ける状態で働く意思があり求職活動をしていることが要件で、前提が正反対だからです。ただし、期間が重ならなければ「働けない間は傷病手当金→回復したら失業保険」と時系列で切り替えて両方の制度を使えます。これは制度が正式に想定している正規の方法です。

切り替えのために必要な手続きは何ですか?

失業保険の受給期間延長の申請です。失業保険が受給できる期間は原則として離職日の翌日から1年間のため、退職後に働けない状態が30日続いたら、ハローワークで受給期間延長を申請します(最長3年延長できます)。これを忘れると失業保険の権利が消滅し得ます。回復して医師が就労可能と判断したら、延長を解除して求職申込を行います。

同じ期間に両方を受け取るとどうなりますか?

同じ期間について、一方に「働けない」、もう一方に「働ける」と虚偽の申告をした場合は、不正受給にあたり得ます。一方、同じ期間の要件を満たすかどうかは保険者とハローワークがそれぞれ判断するもので、一律の併給禁止規定はありません(振込日が重なること自体も問題ではありません)。雇用保険の不正受給が発覚した場合、以後の支給停止に加えて、不正に受けた金額の返還命令と最大でその2倍の金額の納付命令(合計で最大3倍、いわゆる「3倍返し」)の対象となり、悪質な場合は刑事告発もあり得ます。健康保険側の不正受給も返還等の対象です。

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出典(公的機関)

※ 本記事の内容は一般的な制度の解説であり、個別の受給可否・支給金額を保証するものではありません。実際の判断は加入する健康保険・ハローワークにご確認ください。

※ 「労務不能かどうか」「失業状態かどうか」の最終判断は、医師・加入する健康保険・ハローワークが行います。 手続きの前に必ずそれぞれの窓口にご確認ください。