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手続き・その他

退職後の健康保険はどっちが得?
国保と任意継続の保険料を比較

公開日 ・ 最終更新日 ・ 読む時間 約6分

執筆: やめどきナビ編集部

30秒でわかる結論

  • 選択肢は3つ。家族の健康保険の被扶養者になれれば保険料の追加負担なし、無理なら「任意継続」か「国民健康保険(国保)」の2択
  • 任意継続は退職時の標準報酬月額(上限32万円。協会けんぽ・令和8年度)×料率の全額自己負担で、在職中のおおむね2倍が目安
  • 国保は前年の所得ベースだが、会社都合や病気などの離職(非自発的失業)なら前年給与所得を30/100として計算する軽減がある(対象は離職時65歳未満で、受給資格者証の離職理由コードが所定のものに該当する場合)。対象なら軽減後の国保額を試算して比較する(この記事の例では国保が安い)
  • 実質の判断期限は任意継続の20日以内

退職後の健康保険は3つの選択肢

会社を退職すると、在職中の健康保険は退職日の翌日に資格を失います。次のいずれかの手続きが必要です。

  1. 家族の健康保険の被扶養者になる: 認定されれば保険料の追加負担なし
  2. 任意継続被保険者になる: 在職中の健康保険に最長2年続けて加入
  3. 国民健康保険(国保)に加入する: お住まいの市区町村で手続き

保険料がかかるのは2と3。どちらが安いかは前年の収入・離職理由・家族構成で決まります。

任意継続の仕組みと保険料

加入の条件と期限(協会けんぽの場合)

  1. 資格喪失日(退職日の翌日)の前日までに継続して2ヶ月以上の被保険者期間があること
  2. 資格喪失日(退職日の翌日)から20日以内に申請すること(20日目が土日・祝日なら翌営業日。例: 9月30日退職 → 10月20日まで)
  3. 加入できる期間は最長2年間

保険料は「在職中のおおむね2倍」が目安

在職中は会社と本人で保険料を半分ずつ負担していますが、任意継続では全額自己負担になります。 計算のもとになる標準報酬月額は「退職時の標準報酬月額」と「上限32万円(協会けんぽ・令和7年度から。令和8年度も同額)」のいずれか低いほうです。

国保の仕組みと保険料

  • 保険料は前年の所得と世帯の加入人数をもとに、市区町村ごとの料率で計算されます
  • 扶養の概念がないため、家族も国保に入る場合は人数分の保険料がかかります
  • 手続きは退職日の翌日から14日以内に市区町村の窓口へ

退職1年目は「前年=在職中の高い所得」で計算されるため保険料が高くなりがちです。

会社都合・病気などの退職なら「非自発的失業者の軽減」を必ず確認

倒産・解雇などの特定受給資格者、 雇止めや病気など正当な理由で離職した特定理由離職者(離職時65歳未満)は、届出により前年の給与所得を30/100として国保料を算定する軽減を受けられます。期間は離職日の翌日の属する月から、その年度の翌年度末までです。

対象かどうかは受給資格者証の離職理由コードと離職時の年齢で決まります(確かめ方・区分の決まり方)。

比較表: 任意継続 vs 国保

任意継続国民健康保険
保険料の基準退職時の標準報酬月額(上限32万円)前年の所得
負担全額自己負担市区町村ごと。2年目は前年所得の低下で下がりやすい
扶養家族被扶養者の保険料は不要扶養の概念なし。人数分かかる
非自発的失業の軽減なしあり(給与所得を30/100として算定)
期限と効果資格喪失日から20日以内に申請(過ぎると原則加入できない)退職日の翌日から14日以内に届出(遅れてもさかのぼって加入・保険料納付)
期間最長2年(途中でやめることも可能)他の保険に入るまで

年収3水準で比べる: 新宿区の国保料と協会けんぽの任意継続(令和8年度)

前提は「単身・40歳未満(介護分なし)・前年(令和7年中)の収入は給与のみ・賞与なし」。国保は東京都新宿区、任意継続は協会けんぽ東京支部の令和8年度料率で、 給与所得は国税庁の給与所得控除(令和7年分以降)で換算しました。 「軽減あり」の列は非自発的失業者の軽減のみ反映し、均等割の法定軽減(7割・5割・2割)などは未反映です。 月額は年額÷12の目安で、実際の納付1回分(納期の回数で割った額)とは異なります。

前年の年収(月収)国保(軽減なし)国保(非自発的失業の軽減あり)任意継続(協会けんぽ東京)
300万円(月25万円)年235,295円 ≒ 月19,600円年85,693円 ≒ 月7,100円標準報酬月額26万円 → 月26,208円
450万円(月37.5万円)年355,907円 ≒ 月29,700円年121,876円 ≒ 月10,200円上限32万円 → 月32,256円
600万円(月50万円)年482,867円 ≒ 月40,200円年159,964円 ≒ 月13,300円上限32万円 → 月32,256円

計算過程(年収450万円の行)

給与所得 = 450万円 − (450万円 × 20% + 44万円) = 316万円。算定基礎額 = 316万円 − 基礎控除43万円 = 273万円

医療分 = 273万円 × 7.51% + 均等割47,600円 = 252,623円 / 支援金分 = 273万円 × 2.80% + 17,600円 = 94,040円 / 子ども・子育て支援金分 = 273万円 × 0.27% + 1,873円 = 9,244円 → 合計 355,907円(年)

軽減あり: 給与所得を30/100の94.8万円とみなす → 算定基礎額51.8万円 → 医療 86,501円 + 支援 32,104円 + 子育て 3,271円 = 121,876円(年)

任意継続: 報酬月額37.5万円 → 標準報酬月額38万円だが上限32万円 → 32万円 × (健康保険9.85% + 子ども・子育て支援金0.23%) = 32,256円(月。国保側の支援金分と同じ制度の負担を含めて比較)

単身では年収300万円・450万円で軽減がなくても国保が安く、600万円で任意継続が逆転します(上限32万円で頭打ちのため、前年の月収が32万円を超える人ほど任意継続が有利)。 軽減が使える人は、この例ではどの水準でも国保が月2万円前後安くなります。

注意: 均等割の法定軽減(7割・5割・2割)は含んでいません。40〜64歳は国保に介護分(新宿区2.43%+17,800円)、任意継続に介護保険料率1.62%が加わります。 中野区・目黒区・江戸川区は一部の料率が異なります。

扶養家族がいる場合: 任意継続は人数が増えても保険料が変わらない

任意継続は本人の標準報酬月額×料率だけで決まり、被扶養者(認定には収入要件あり)が何人いても追加負担はありません。 国保は加入者1人ごとに均等割がかかり、新宿区なら所得のない配偶者1人につき医療分47,600円+支援金分17,600円+子ども・子育て支援金分1,873円=67,073円(年)、18歳未満の子は子ども・子育て支援金分がかからず65,200円(年)です。

計算例: 年収450万円・配偶者(所得なし)と小学生の子1人の3人世帯

国保(軽減なし) = 本人分355,907円 + 配偶者67,073円 + 子(小学生)65,200円 = 488,180円(年、月約40,700円)

任意継続 = 月32,256円 × 12 = 年387,072円(被扶養者2人分の追加なし)

国保(軽減あり) = 121,876円 + 132,273円 = 254,149円(年、月約21,200円)

扶養家族2人がいると、軽減なしでは任意継続が年約10.1万円安く、軽減ありなら国保が年約13.3万円安いままです。家族分の均等割は30/100の対象外ですが、 世帯所得の低下で法定軽減に該当する場合があります(未就学児の均等割は申請不要で5割減額)。

どっちが得?判断の手順(5ステップ)

  1. 家族の扶養に入れるか、加入先の健保に確認する

    認定基準(年収見込みなど)は加入先の健保ごとに異なり、失業手当の受給中は基本手当日額によっては認定されない扱いが一般的です(協会けんぽでは、60歳未満で障害者でない人は基本手当日額3,612円以上、60歳以上または一定の障害のある人は日額5,000円以上で認定不可)
  2. 自分が非自発的失業(特定受給資格者・特定理由離職者)に当たるか確認する

    当たるなら、軽減後の国保額を試算して比較する(この記事の例では国保が安い。確かめ方は下の手順)
  3. 国保の保険料を市区町村で試算してもらう

    軽減適用後の額で比較する
  4. 任意継続の保険料を計算する

    退職時の標準報酬月額(上限32万円)×お住まいの料率。健康保険組合の場合は組合に確認
  5. 安いほうを選ぶ(実質の判断期限は任意継続の20日)

    国保の14日は届出の期限で、任意継続・家族の被扶養者・他の健康保険に加入しない場合は資格が退職日の翌日に発生し、届出が遅れてもさかのぼって加入・納付(国民健康保険法7条・施行規則2条)。任意継続の20日は過ぎると原則加入できないため、判断は20日以内に

非自発的失業の軽減を自分で確かめる手順と、自治体で変わる点

  1. 受給資格者証の「離職理由」欄(第1面の12番)の2桁コードを見る

    11・12・21・22・31・32は特定受給資格者、23・33・34は特定理由離職者として対象。それ以外(40・45・50・55など)は対象外です(マイナンバーカードで手続きした人は「雇用保険受給資格通知」で確認)
  2. 離職日時点で65歳未満かを確認し、対象期間を数える

    「離職日の翌日が属する月」から「その年度の翌年度末」まで。例: 2026年3月31日退職 → 2026年4月分〜2028年3月分(24ヶ月)。2026年3月15日退職 → 2026年3月分〜2027年3月分(13ヶ月)。退職日が半月違うだけで11ヶ月の差が出ます
  3. 市区町村の国保窓口に「特例対象被保険者等に係る届」を出す

    持ち物は受給資格者証(または受給資格通知)、本人確認書類、マイナンバーが分かるもの。新宿区はコピーを添えた郵送も可。遅れた届出が初月までさかのぼるかは自治体に確認を
  4. 軽減後の年額を試算してもらい、任意継続の月額×12と比べる

    任意継続をやめて移るなら、資格喪失日(申出受理月の翌月1日)以降の月数で比べます

軽減の中身は全国共通ですが、料率・賦課方式(資産割の有無)、「保険料」か「保険税」か、所得の急減などを理由とする独自減免の有無は市区町村ごとに違うため、国保課で確認してください。 協会けんぽの料率も都道府県ごと(令和8年度9.44〜10.55%)、健保組合は組合ごとに料率・上限が異なります。

途中で切り替えられる?(1年目任意継続→2年目国保)

任意継続は2022年(令和4年)1月1日以降、本人の申出による脱退が可能です。 資格喪失日は申出書が受理された日の属する月の翌月1日(協会けんぽ)。 例: 2027年3月に申出書を提出 → 4月1日に資格喪失 → 国保は4月1日加入(届出は4月14日まで)。保険料は月単位なので二重払いは生じません。 前年所得で計算される国保が安くなる2年目のタイミングで切り替える方法が取れます(比較はその時点の最新の額どうしで)。

傷病手当金を受けている人への注意

退職後に傷病手当金の継続給付を受ける場合、その給付は「退職時までの被保険者資格」に基づくものなので、退職後に任意継続と国保のどちらを選んでも継続給付は受けられます。 健康保険の選択と傷病手当金の継続給付は分けて考えてください。

次の行動: 退職日から20日以内にやることの順番

  1. 退職日〜3日目: 退職時の標準報酬月額を確かめ、会社に「健康保険資格喪失証明書」を依頼

    標準報酬月額は給与明細の健康保険料(本人負担分)÷(料率÷2)で逆算できます。例: 東京(9.85%)で14,775円なら 14,775 ÷ 4.925% = 30万円
  2. 〜10日目: 家族の健保に被扶養者の可否を照会し、市区町村で国保を試算(離職票のコピーを持参)

  3. 〜14日目: 国保なら届出。任意継続なら20日目までに協会けんぽ支部へ申出書(郵送可)

    迷ったら任意継続の申出を先に出す順番も取れますが、脱退の資格喪失日は申出受理月の翌月1日で、少なくとも申出月分の任意継続保険料は発生し、当月中に取り消して国保へ遡ることは通常できません。比較は申出期限(退職日翌日から20日)内に済ませるのが安全です。1年後は2年目の国保料を試算し、安ければ脱退の申出を

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よくある質問

任意継続の保険料はいくらになりますか?

退職時の標準報酬月額(上限32万円。協会けんぽ・令和8年度)に料率を掛けた全額が自己負担となり、在職中のおおむね2倍が目安です。例えば協会けんぽ東京支部・令和8年度の健康保険料率9.85%に子ども・子育て支援金率0.23%(令和8年4月分から)を加えた10.08%・40歳未満で、標準報酬月額30万円なら月30,240円、41万円の人は上限32万円が適用され月32,256円です。料率は都道府県・年度で異なるため(令和8年度は9.44〜10.55%)、正確な額はご自身の健康保険(協会けんぽ支部・健保組合)にご確認ください。

会社都合や病気で退職した場合、国保は安くなりますか?

倒産・解雇などの特定受給資格者や、雇止め・病気など正当な理由で離職した特定理由離職者(離職時65歳未満)は、届出により前年の給与所得を30/100として国保料を算定する軽減を受けられます。期間は離職日の翌日の属する月から、その年度の翌年度末までです。実際の判定は雇用保険受給資格者証に記載される離職理由コード(11・12・21・22・23・31・32・33・34)への該当と離職時65歳未満などの要件で行われます。この軽減が使える人は軽減後の国保料が任意継続より安くなることがあります(この記事の例では国保が安い。自治体・家族構成で変わる)ため、雇用保険受給資格者証を持って市区町村で試算・確認してもらってください。

任意継続と国保の申請期限はいつまでですか?

任意継続は資格喪失日(退職日の翌日)から20日以内に申請する必要があり、期限を過ぎると原則として加入の機会を失います。一方、国保の「退職日の翌日から14日以内」は資格取得の届出期限で、届出が遅れても退職日の翌日にさかのぼって加入となり、保険料もさかのぼって納めます。期限の効果が違うため、実質的に「どちらにするか」の判断期限になるのは任意継続の20日です。家族の扶養に入れるか(認定基準は加入先の健保ごとに異なります)の確認と並行して両方の保険料を試算し、期限内に手続きしてください。

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出典(公的機関)

※ 本記事の内容は一般的な制度の解説であり、個別の受給可否・支給金額を保証するものではありません。実際の判断は加入する健康保険・ハローワークにご確認ください。

※ 保険料の窓口は選択肢ごとに異なります。任意継続は加入していた健康保険(協会けんぽ支部・健康保険組合)、国民健康保険はお住まいの市区町村が窓口です。