傷病手当金は退職後もいつまでもらえる?
継続給付の3条件と申請の流れ
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執筆: やめどきナビ編集部

30秒でわかる結論
- 退職後も受け取れる仕組みは「資格喪失後の継続給付」(=会社の健康保険を抜けた後も続けてもらえる制度)。ただし条件を満たす場合だけ
- 3条件: (1)退職日までに継続1年以上の被保険者期間(=健康保険に入っていた期間) (2)退職日時点で傷病手当金を受けているか受けられる状態 (3)退職日に出勤していない
- 金額は在職中と同じ計算(直近12ヶ月の標準報酬月額(=保険料のもとになる給料の額)の平均÷30×2/3)。もらえる期間は支給開始から通算1年6ヶ月まで
- 退職日に出勤すると継続給付の対象外になることがある。最後の挨拶出社にも注意
- 最終的にもらえるかどうかは、加入している健康保険(協会けんぽ・健保組合)が判断します
退職=打ち切り、ではない
傷病手当金(=病気やケガで休む間に健康保険から出るお金)は、健康保険に入っている本人(在職中の人)への給付です。 ただし、退職して健康保険を抜けた後も、条件を満たせば 「資格喪失後の継続給付」として引き続き受け取れる場合があります。 目安になるのは、退職日までに継続1年以上の被保険者期間があるか・退職日に傷病手当金を受けているか受けられる状態(労務不能で、連続3日の待期が退職日の前日までにすんでいる)か・退職日に出勤していないかの3点です。 いつまで受け取れるかは支給開始日から通算1年6ヶ月までで、退職しても期間は変わりません。 退職後は在職中のように会社が取りまとめてくれるとは限らないため、協会けんぽ(または健保組合)への提出方法は勤務先と保険者に確認してください(本人が提出するほか、社会保険労務士による代理提出も認められています)。 病気やケガ(うつ病などの心の不調を含む)で働けないまま退職する人にとって、退職後の生活を支える大切な制度です。 ただし条件は厳しく、退職日の過ごし方ひとつで対象外になることがあります。 最終的にもらえるかどうかは加入している健康保険が判断するため、退職前に確認しておいてください。
継続給付の3条件
退職日(資格喪失日の前日)までに、継続して1年以上の被保険者期間があること
健康保険に入っていた本人としての期間です。転職していても、空白なく続いていれば合計できます。 任意継続被保険者(=退職後に自分で前の健康保険を続ける制度)の期間や、国民健康保険の期間、共済組合の組合員だった期間は、この「1年」に入りません。退職日の時点で、傷病手当金を受けているか、受けられる状態であること
「受けられる状態」とは、労務不能(=働けない状態)で、連続3日間の待期(=支給前に必ず休む3日間)がすんでいるなど、支給の条件を満たしている状態のことです。 まだ振り込まれていなくても、当てはまることがあります。退職日に出勤していないこと
退職日に出勤すると、退職日の翌日からの傷病手当金は出ない扱いとされています。
退職日にやってはいけないこと
注意したい例が「最終日だけ挨拶や荷物整理で出社してしまう」ケースです。 退職日に出勤扱いになると、上の条件3を満たせません。退職後の分がもらえなくなるおそれがあります。 挨拶や引き継ぎは、退職日より前に済ませましょう。出勤扱いにならない形を会社と相談する方法もあります。 念のため、加入先の健康保険にも事前に確認しておくと安全です。
いくら・いつまでもらえる?(計算式と3水準の比較表)
1日あたりの金額は在職中と同じ計算式です。
1日あたりの支給額
支給開始日以前の継続した12ヶ月間の各月の標準報酬月額の平均 ÷ 30 × 2/3
例: 標準報酬月額の平均が30万円の場合、300,000円 ÷ 30 × 2/3 =1日あたり約6,667円(月換算で約20万円)
「標準報酬月額」は保険料計算用の区分で手取りでも基本給でもなく、保険者(協会けんぽの支部・健保組合)に照会すると分かります。 端数は協会けんぽの公表例に合わせ、平均 ÷ 30 で10円未満を四捨五入し、× 2/3 で1円未満を四捨五入します(健康保険法99条2項。2026年9月6日確認)。
| 標準報酬月額の平均 | 計算過程 | 1日あたり | 30日分 | 90日分 | 180日分 |
|---|---|---|---|---|---|
| 220,000円 | 220,000 ÷ 30 → 7,330円 × 2/3 | 4,887円 | 146,610円 | 439,830円 | 879,660円 |
| 300,000円 | 300,000 ÷ 30 → 10,000円 × 2/3 | 6,667円 | 200,010円 | 600,030円 | 1,200,060円 |
| 410,000円 | 410,000 ÷ 30 → 13,670円 × 2/3 | 9,113円 | 273,390円 | 820,170円 | 1,640,340円 |
(暦日で計算した目安。待期3日と労務不能でなかった日は対象外です。給与が出た日はその額と、退職後に老齢年金(退職厚生年金等)や同じ病気・ケガによる障害厚生年金を受ける期間はその年額÷360の日額と、傷病手当金の日額を比べ、少なければ差額が支給され、多ければ支給されません。同じ病気・ケガによる障害手当金(一時金)は、傷病手当金の合計がその額に達するまで支給されません(調整。下の年金調整表と同じ扱い))
支給開始日以前の加入期間が12ヶ月に満たない場合
①本人の継続した各月の平均と、②全被保険者の平均標準報酬月額(協会けんぽは令和7年4月1日以降の支給開始分で320,000円)の低い方を使います。例: 入社8ヶ月で発症し本人の平均が380,000円でも、320,000 ÷ 30 = 10,670円 × 2/3 = 7,113円です。
もらえる期間は、支給開始日から通算して1年6ヶ月です。 退職しても、この期間は変わりません。
申請の流れ(退職後の書類・提出先・頻度)
退職後は在職中のように会社が取りまとめてくれるとは限らず、様式の入手から郵送まで本人が行うのが基本です(社会保険労務士による代理提出も認められています。協会けんぽの場合。健保組合は様式と提出先が組合ごとに異なります)。
加入していた健康保険を確認する
保険証(資格確認書)の「保険者名称」欄が「全国健康保険協会 ◯◯支部」なら協会けんぽ、「◯◯健康保険組合」なら健保組合。退職後に国保や任意継続へ移っても申請先はこの保険者のままです「健康保険傷病手当金支給申請書」を協会けんぽのサイトから入手する
被保険者記入用2枚・事業主記入用1枚・療養担当者記入用1枚の4枚1組。令和5年1月に様式が変わっているため古い用紙は使いません1ヶ月ごと(給与締切日ごと)に、期間が終わってから療養担当者の意見欄を書いてもらう
受診が途切れた期間は証明できないことがあるため、証明できる期間を医療機関に確認します。請求権は労務不能だった日ごとに2年で時効(健康保険法193条)。2026年10月31日分なら2028年10月31日が期限です事業主記入用は「退職日までの在職期間を含む回」だけ会社に依頼する
退職日に出勤していないこと・給与が出ていないことの証明を兼ねます。退職日の翌日以降だけの回は不要で、被保険者記入用+療養担当者記入用で提出します在職中に加入していた都道府県の協会けんぽ支部へ郵送する
引っ越しても提出先は変わりません。初回は退職日の確認や事業主証明の照会で時間がかかることがあります
年金・出産手当金との調整と、健保組合の付加給付
退職後の傷病手当金は、ほかの給付を受けていると全部または一部が支給されません(健康保険法103条・108条)。該当しそうな給付があれば申請前に保険者へ伝えます。
| 受けている(受ける予定の)給付 | 調整のしかた | 確認先 |
|---|---|---|
| 老齢厚生年金など老齢退職年金(退職後の継続給付中のみ) | 年金額 ÷ 360 が日額以上なら不支給、低ければ差額 | 年金証書の年額、ねんきんネット |
| 障害厚生年金(同じ病気・ケガが原因) | 年額(障害基礎年金も受けるときは合計)÷ 360 が日額以上なら不支給、低ければ差額。さかのぼって決まると受け取り済みの分は返還 | 年金証書、年金事務所 |
| 障害手当金(一時金) | 傷病手当金の合計額が障害手当金の額に達するまで不支給 | 年金事務所 |
| 出産手当金 | 出産手当金が優先。傷病手当金のほうが高いときは差額のみ | 保険者(協会けんぽ支部・健保組合) |
老齢年金との調整の計算例(退職後、年金を受けながら継続給付を受ける場合)
傷病手当金の日額 6,667円(標準報酬月額の平均30万円)の人が、
年金額 年150万円: 1,500,000 ÷ 360 = 4,166円 → 日額より低いので差額 6,667円 − 4,166円 = 1日あたり約2,501円を支給
年金額 年250万円: 2,500,000 ÷ 360 = 6,944円 → 日額以上なので傷病手当金は支給されない
(端数の扱いは保険者の決定によります。在職中の傷病手当金と老齢年金は調整されません)
反対に、健康保険組合には法定の3分の2に付加給付(傷病手当金付加金)を上乗せするところがあります(協会けんぽにはありません)。 組合サイトの「給付一覧」か組合規約の給付の章で探し、見当たらなければ給付担当に「付加金の有無と、退職後の継続給付にも付くか」を電話で確認します。
「挨拶で顔を出すだけなら大丈夫」は本当?
誤解1「退職日に挨拶と片付けで1時間だけ出社するのは勤務ではない」— 継続給付の条件は「資格を喪失した際に傷病手当金の支給を受けている」こと(健康保険法104条)で、前提は退職日に労務不能であることです。 会社が出勤として処理すれば1時間でも同じ結果になり得るため(協会けんぽ「退職日に出勤したときは資格喪失後の傷病手当金はお支払いできません」。2026年9月6日確認)、 退職日を欠勤または有給休暇として処理してもらうよう会社と保険者に事前に確認してください。
誤解2「退職後に医師に『就労可能』と書いてもらい、失業保険と両方もらう」— 就労可能の証明は健康保険側では「労務不能でなくなった」証明で、一度働ける状態と判断されると再び働けなくなっても退職後の継続給付は再開されないのが原則です(協会けんぽの公表資料)。 労務不能かどうかの最終判断は保険者が個別審査で行うため、就労可能の証明を出す前に保険者へ確認し、主治医と復職の見通しを共有してから進めてください。順番は傷病手当金と失業保険の順番の記事へ。
誤解3「任意継続に入れば1年6ヶ月より長くもらえる」— 支給期間は同じ病気について支給開始日から通算1年6ヶ月で固定です(健康保険法99条4項)。任意継続被保険者に新たな傷病手当金は支給されず、継続給付は退職時の資格にもとづくものです。
回復後は失業手当への切り替えを検討
働けるまで回復すると、傷病手当金は終わります。その先には、雇用保険の基本手当(失業手当)があります。 失業手当の受給期間(離職日の翌日から1年)内に回復して受け取り切れる見込みなら受給期間延長(=もらう権利をとっておく手続き)は不要ですが、療養が長引く場合の権利保全として、働けない状態が30日続いたら申請しておきます。傷病手当金→失業手当の順番と手続きを、退職前後の早い段階で確認しておいてください。金額のめやすは失業手当の計算方法で解説しています。
次にやること(状況別)
退職日が決まっている(まだ在職中)
保険者に「被保険者期間が退職日までに継続1年以上あるか」を照会し、人事・総務に「退職日は出勤扱いにしない」ことを文面で確認し、 主治医に退職日を含む期間の意見書を書いてもらう受診日を予約します。任意継続か国保かは保険料の比較の記事で退職前に決めます退職済みで継続給付を受けている
退職翌日から働けない状態が30日続いたらハローワークで受給期間延長を申請(離職票-2と診断書。郵送可)。手順は受給期間延長の記事へ
よくある質問
退職後も傷病手当金を受け取るための条件は何ですか?
「資格喪失後の継続給付」の3条件を満たす場合に受け取れます。(1)退職日(資格喪失日の前日)までに継続して1年以上の被保険者期間があること(任意継続被保険者・国民健康保険・共済組合の期間は含まれません)、(2)退職日の時点で傷病手当金を受けているか受けられる状態であること、(3)退職日に出勤していないこと、の3つです。最終的な支給可否の判断は加入している健康保険(協会けんぽ・健保組合)が行います。
退職日に挨拶や荷物整理で出社するとどうなりますか?
退職日に出勤扱いとなった場合、継続給付の条件(退職日に出勤していないこと)を満たさず、退職日の翌日以降の傷病手当金が支給されないおそれがあります。挨拶や引き継ぎは退職日より前に済ませる・出勤扱いにならない形を会社と相談するなど、事前に加入先の健康保険にも確認しておくのが安全です。
退職後の傷病手当金はいくら・いつまでもらえますか?
1日あたりの金額は在職中と同じで、支給開始日以前の継続した12ヶ月間の各月の標準報酬月額の平均÷30×2/3です(例: 平均30万円なら1日約6,667円)。支給期間は支給開始日から通算して1年6ヶ月までで、退職しても期間は変わりません。
退職後は、傷病手当金をどこにどうやって申請しますか?(協会けんぽの場合)
申請先は在職中に加入していた保険者のままです。保険証(資格確認書)の保険者名称が「全国健康保険協会 ◯◯支部」なら協会けんぽ、「◯◯健康保険組合」なら健保組合に申請します。協会けんぽの場合は「健康保険傷病手当金支給申請書」(被保険者記入用2枚・事業主記入用1枚・療養担当者記入用1枚の4枚1組)を協会けんぽのサイトから入手し、1ヶ月ごとに期間が終わってから療養担当者の意見欄を書いてもらい、在職中に加入していた都道府県の支部へ郵送します。退職後は在職中のように会社が取りまとめてくれるとは限らず、様式の入手から郵送まで本人が行うのが基本です(社会保険労務士による代理提出も認められています)。事業主記入用は退職日までの在職期間を含む回だけ会社に依頼します。請求権は労務不能だった日ごとに2年で時効です(健康保険法193条)。健保組合は様式・提出先が組合ごとに異なります。
いったん復職してから退職した場合も、継続給付を受けられますか?
判断の分かれ目は退職日(資格喪失日の前日)の状態です。在職中に復職して働いていた期間があっても、退職日の時点で労務不能で傷病手当金を受けているか受けられる状態であり、退職日までに継続1年以上の被保険者期間があって退職日に出勤していなければ、継続給付の対象になり得ます(同じ病気・ケガについての支給期間は、支給開始日から通算して1年6ヶ月の枠内です)。一方、退職後にいったん「働ける状態」と判断されると、その後再び働けなくなっても退職後の継続給付は再開されないのが原則とされています。労務不能かどうかの判断は医師と保険者が行うため、退職日を決める前に加入先の健康保険(協会けんぽ・健保組合)へ確認してください。
退職後に任意継続被保険者になったら、傷病手当金はどうなりますか?
継続給付は退職時の資格にもとづくもので、退職後に任意継続に入るか国民健康保険に入るかは、継続給付を受けられるかどうかには影響しないとされています(最終的な判断は加入していた健康保険〈協会けんぽ・健保組合〉が行うため、ご自身の保険者にご確認ください)。申請先も在職中に加入していた保険者のままです。なお、任意継続被保険者に新たな傷病手当金は支給されず、支給期間も同じ病気について支給開始日から通算1年6ヶ月で変わりません。また、継続給付の条件である「継続して1年以上の被保険者期間」に、任意継続被保険者・国民健康保険・共済組合の期間は含まれません。
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出典(公的機関)
- 協会けんぽ「傷病手当金|給付と手続き」(外部サイトが新しいタブで開きます)発行主体: 全国健康保険協会(協会けんぽ)・確認日: 2026-08-11
- 協会けんぽ「病気やケガで会社を休んだとき(傷病手当金)よくあるご質問」(外部サイトが新しいタブで開きます)発行主体: 全国健康保険協会(協会けんぽ)・確認日: 2026-08-11
- 東京都(がんポータル)「資格喪失後の傷病手当金の詳細」(PDF)(外部サイトが新しいタブで開きます)発行主体: 東京都・確認日: 2026-08-11
- e-Gov法令検索「健康保険法」(第99条 支給要件・支給額・支給期間、第103条 出産手当金との調整、第104条 資格喪失後の継続給付、第108条 報酬・年金との調整、第193条 時効)(外部サイトが新しいタブで開きます)発行主体: デジタル庁(e-Gov)・確認日: 2026-09-06
- 協会けんぽ「病気やケガで会社を休んだとき(傷病手当金)」よくあるご質問(退職後の申請・老齢年金との調整・申請の単位)(外部サイトが新しいタブで開きます)発行主体: 全国健康保険協会(協会けんぽ)・確認日: 2026-09-06
- 協会けんぽ「健康保険傷病手当金支給申請書」(様式・提出先・添付書類)(外部サイトが新しいタブで開きます)発行主体: 全国健康保険協会(協会けんぽ)・確認日: 2026-09-06
※ 本記事の内容は一般的な制度の解説であり、個別の受給可否・支給金額を保証するものではありません。実際の判断は加入する健康保険・ハローワークにご確認ください。
※ 労務不能かどうかの判断は医師と保険者が行います。