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手続き・その他

うつ・適応障害で退職するとき使える制度まとめ
(傷病手当金・失業保険・自立支援)

公開日 ・ 最終更新日 ・ 読む時間 約8分

執筆: やめどきナビ編集部

30秒でわかる結論

  • 収入面の基本線は「在職中に傷病手当金の受給を始める → 退職後も継続給付 → 回復後に失業保険」の順。この順番を退職前に整えられるかで大きく変わる
  • 傷病手当金は給与のおおむね3分の2×通算1年6ヶ月。退職後も続けて受けるには退職日までに支給要件を満たしておくことが決定的に重要(申請書の提出自体は退職後でも可能)
  • すぐ働けない間は失業保険の受給期間延長を申請して権利を保存。医療費は自立支援医療で自己負担が原則1割に
  • 各制度には要件があり、「必ずもらえる」ものではありません

全体マップ: いつ・何が使えるか

お金に関わる制度を「退職前 → 退職直後 → 療養中 → 回復後」の時系列で整理しました。受診の要否・診断・「働ける/働けない」の判断は、いずれも医師が行うもので、 制度の利用はすべてその判断が出発点になります。

時期制度ざっくり内容
在職中〜療養中傷病手当金(健康保険)給与のおおむね3分の2を通算1年6ヶ月
退職前後失業保険の受給期間延長すぐ働けない間、受給の権利を保存(最長3年延長)
通院中ずっと自立支援医療(精神通院医療)通院医療費の自己負担が原則1割に
初診から6ヶ月経過後精神障害者保健福祉手帳失業保険の給付日数が増える「就職困難者」に該当する可能性(判断はハローワーク)
回復後失業保険(基本手当)働ける状態になってから受給
長期化した場合障害年金初診から1年6ヶ月経過後、要件を満たせば請求可

時系列: いつ・何を・どこに申請するか(期限つき)

時期すること → どこに期限・根拠
退職2か月前〜主治医に相談し、労務不能なら在職中に傷病手当金の申請を始める → 会社経由で保険者(協会けんぽ支部・健保組合)請求権は労務不能の日ごとに2年で時効(健康保険法第193条)
退職日〜2週間離職票を受け取り、国保加入または任意継続 → 市区町村・保険者任意継続は退職日の翌日から20日以内(健康保険法第37条)。離職票は退職から10〜14日が目安
退職後1〜2か月ごと傷病手当金の継続給付を申請 → 保険者に直接支給開始日から通算1年6か月(第99条第4項)
働けない状態が30日続いたら受給期間延長 → ハローワーク本来の受給期間(離職日の翌日から12か月)に最長3年を加算(雇用保険法第20条第1項)
通院が続くと分かった時点自立支援医療(精神通院) → 市区町村の障害福祉課受給者証は1年ごとに更新。診断書は2回に1回省略可
初診日から6か月後精神障害者保健福祉手帳 → 市区町村経由で都道府県2年ごとに認定(精神保健福祉法第45条第4項)
初診日から1年6か月後障害年金の請求 → 年金事務所障害認定日による請求は5年分まで遡及(日本年金機構)

1. 傷病手当金: 療養中の収入の柱

病気やケガの療養のため働けず、給与が出ない期間について、健康保険から1日あたり「支給開始日以前12ヶ月の標準報酬月額の平均÷30日×3分の2」が支給されます。支給期間は支給を開始した日から通算1年6ヶ月です。 うつ病・適応障害などの精神疾患も、療養のため労務不能と医師が証明すれば対象になり得ます。

退職を考えている人に特に重要なのが、退職後も受け続けられる「継続給付」の条件です。

  1. 退職日までに継続して1年以上健康保険の被保険者であること
  2. 退職日の時点で傷病手当金を受けているか、受けられる状態であること
  3. 退職日に出勤しないこと

申請書の提出自体は退職後でも可能です。詳しい条件(待期3日・時効2年など)と手続きは傷病手当金は退職後もいつまでもらえる?の記事で解説しています。

2. 失業保険: 「働ける状態」になってから。まず受給期間延長

失業保険(基本手当)は「働ける状態で求職している人」への給付のため、療養中で働けない間は受給できません。 ここで使うのが受給期間延長です。

  • 失業保険を受給できる期間は原則、離職日の翌日から1年間
  • 病気などで引き続き30日以上働けないときは、申請により最長3年延長できる(権利の保存)

申請方法と期限は受給期間延長の記事、 傷病手当金→失業保険の切り替えの全体像は両方もらえる?順番の記事で解説しています。

また、病気を理由とする退職は「正当な理由のある自己都合離職」として特定理由離職者と判断されれば、給付制限(原則1ヶ月)なしで受給できる場合があります。判定はハローワークが行います。区分の違いは自己都合と会社都合の違いの記事を参照してください。

精神障害者保健福祉手帳があれば「就職困難者」として日数が増える可能性

精神障害者保健福祉手帳を持っている人は、失業保険の就職困難者に 該当する可能性があります。該当するかどうかは離職時点の状態等を踏まえた個別判断で、最終判断はハローワークが行います。 就職困難者と判断された場合の所定給付日数は次のとおりです。

離職時の年齢被保険者期間1年未満1年以上
45歳未満150日300日
45歳以上65歳未満150日360日

該当と判断された場合、一般の自己都合離職(90〜150日)と比べて大幅に長くなります。手帳の申請には初診日から6ヶ月以上経過した時点の診断書が必要とされているため、該当しそうな人は主治医と申請時期を相談してください。

3. 自立支援医療(精神通院医療): 通院費の負担を軽く

うつ病などの精神疾患で継続的な通院が必要な人は、自立支援医療(精神通院医療)を申請すると、 対象となる通院医療費(診察・デイケア・薬代など)の自己負担が原則1割に軽減されます。 さらに所得に応じた月額の負担上限が設けられており、上限を超えた分の自己負担は生じません。

もっとくわしく(負担上限額の経過的特例)

上限額は所得区分や「重度かつ継続」への該当で異なります。 市町村民税23万5千円以上で「重度かつ継続」に該当する人を対象に上限2万円とする経過的特例は、令和9年3月31日まで延長されています。

  • 実施主体は都道府県・指定都市で、申請窓口はお住まいの市区町村(障害福祉担当課)です
  • 医師の診断書等が必要です。通院先の医療機関・薬局を指定して利用します

4. 障害年金: 療養が長期化したときの選択肢

症状が重く長期化した場合は、障害年金(障害基礎年金・障害厚生年金)の対象になる可能性があります。原則として初診日から1年6ヶ月を経過した日(障害認定日)の障害の状態で判定され、初診日の前日時点での保険料納付要件などもあります。 うつ病などの気分障害も認定の対象疾患に含まれます。 障害認定日は原則、初診日から1年6ヶ月を経過した日です。 傷病手当金の支給開始日(待期3日の翌日)とは起算点が別で、初診から長く働いてから休業した人ほど、傷病手当金の満了と障害認定日は一致しません。 傷病手当金の満了を待たず、初診日を確認したうえで早めに主治医と年金事務所に相談してください(傷病手当金受給中の人向けの案内も日本年金機構から出ています)。

制度別: 必要な診断書と費用感・相談先

制度医師の書類費用の目安・確認先
傷病手当金支給申請書の療養担当者記入欄(労務不能の意見)。申請期間ごとに必要診療報酬「傷病手当金意見書交付料」100点=1,000円。3割負担なら300円
受給期間延長申請書の医師記入欄または診断書(30日以上就労できない旨)保険外の文書料。様式は管轄ハローワークで確認
自立支援医療所定の診断書(指定自立支援医療機関で作成)。手帳と同時申請なら1通で兼ねられる場合あり保険外の文書料。必要書類は市区町村の障害福祉課で確認
精神障害者保健福祉手帳初診日から6か月経過後の所定の診断書。障害年金受給者は年金証書の写しで代替可保険外の文書料。診断書料を補助する自治体あり(例: さいたま市は実費・上限4,000円)
障害年金診断書(精神の障害用)+受診状況等証明書(初診の医療機関が別の場合)+病歴・就労状況等申立書保険外の文書料。作成前に年金事務所へ相談(日本年金機構)

文書料は医療機関が独自に決め、健保組合は付加給付や様式が組合ごと、自治体は必要書類と診断書料補助の有無が異なります。 どこに相談してよいか分からないときは、都道府県・指定都市の精神保健福祉センター(精神保健福祉法第6条)が無料で相談を受けています。

給付収入と医療費負担の例: 傷病手当金+自立支援医療

傷病手当金は現金の収入、自立支援医療は通院医療費の支出の軽減です。同じ人の例で、受け取る額と減る負担を分けて示します。

標準報酬月額30万円(直近12か月の平均)の場合

傷病手当金の日額: 300,000円÷30=10,000円 × 2/3=6,666.67円 → 6,667円(1円未満は50銭以上を切り上げ。健康保険法第99条第2項)

1か月(30日)= 200,010円。支給開始日を2025年4月1日、終了日を2026年9月30日(通算1年6か月を途切れず使い切った場合)とすると対象は548日分で、 6,667円 × 548日 = 3,653,516円 → 合計目安は約365万円。非課税です(第62条)。途中に給与が出た日や労務不能でない日があれば、その分は減ります

自立支援医療: 月の医療費総額2万円(診察2回+薬)なら3割6,000円→1割2,000円で月4,000円・年4.8万円の軽減。 月6万円なら1割6,000円ですが上限5,000円(市町村民税所得割3.3万円未満で「重度かつ継続」の場合)が働き、月1.3万円の軽減

給与が出る期間は差額のみ(第108条第1項)、同一の傷病で障害厚生年金を受けると不支給または差額調整です(同条第3項)。国保・年金の保険料は自分で払います。

退職前チェックリスト(5項目)

  1. 主治医に相談する

    診断・休職・就労可否の判断はすべてここから。「退職を考えている」ことも伝えて療養方針を相談する
  2. 退職前に休職・傷病手当金を検討する

    継続給付の3条件(①退職日まで続けて1年以上、健康保険の被保険者である(任意継続・国保・共済組合の期間は数えない) ②退職日の時点で傷病手当金を受けているか、受けられる状態である(働けない+待期3日がすんでいる) ③退職日に出勤していない)を満たせる段取りかを確認
  3. 離職票を受け取る

    病気による退職であることが離職理由にどう記載されるかを確認(離職票のもらい方の記事)
  4. 働けない状態が30日続いたら受給期間延長を申請する

    失業保険の権利を保存する
  5. 健康保険の切り替えと自立支援医療を手続きする

    国保か任意継続かは比較記事で。特定理由離職者なら国保料の軽減も確認

不正受給への注意: 「働けない」と「働ける」は使い分けられない

制度を組み合わせるうえで、絶対に避けるべきことがあります。

  • 実際は働ける状態なのに「働けない」と偽って傷病手当金や受給期間延長を受ける
  • まだ働けない状態なのに「働ける・求職中」と偽って失業保険を受ける
  • 同じ期間について、一方に「働けない」、もう一方に「働ける」と事実と異なる申告をして両方を受け取る(要件を満たすかは保険者とハローワークがそれぞれ判断します。一律の併給禁止規定はありませんが、両方の要件を同時に満たすと認められることは通常ありません)
注意: 雇用保険の不正受給は、支給停止・全額返還に加えて最大2倍の納付命令(合計最大3倍)の対象で、 悪質な場合は刑事告発もあり得ます。「働ける/働けない」は自己申告で使い分けるものではなく、医師の証明と保険者・ハローワークの確認に基づいて進めてください。 給付金業者の注意点はこちらの記事へ。

よくある誤解と根拠

よく見る言い方実際は根拠(2026-09-06確認)
「精神疾患だと失業保険はもらえない」要件は「労働の意思と能力」。療養中は受給できませんが受給期間延長で権利を保存でき、手帳があれば就職困難者として300日・360日になる可能性があります雇用保険法第4条第3項・第20条・第22条第2項
「自立支援医療を使うと会社にバレる」申請は本人が市区町村に行い、勤務先を経由しません。勤務先へ通知する仕組みは法律上ありません障害者総合支援法第52条・第53条
「退職したら傷病手当金は申請できない」退職日まで続けて1年以上加入し、退職時に受給中(または受けられる状態)で、退職日に出勤していなければ継続給付。過去の期間分も2年以内なら退職後に事後申請できます健康保険法第104条・第193条

自分の場合の金額とスケジュールを知りたいとき

失業手当シミュレーターに退職日と月給を入れると、失業保険の金額(基本手当日額・総額)の目安を見る用途に使えます。 ただしツールは「退職の14日後にハローワークで申請する」と仮定して日付を置くため、受給期間延長のあとに申請する人には日付の目安は当てはまりません。 傷病手当金から失業保険へ切り替える日程は、両方もらえる?順番の記事の手順(延長解除・求職申込日を起点にした計算例)で確認してください。

失業手当シミュレーター

退職日と月給を入れると、もらえる金額の目安と受給スケジュールを時系列で確認できます。

無料でシミュレーションする →

よくある質問

うつ病・適応障害で退職するとき、収入面ではどの制度をどの順番で使いますか?

基本線は「在職中に傷病手当金の受給を始める → 退職後も継続給付 → 回復後に失業保険」の順です。傷病手当金は給与のおおむね3分の2×通算1年6ヶ月。退職後も続けて受けるには、①退職日まで続けて1年以上、健康保険の被保険者であること(任意継続・国保・共済組合の期間は数えません)、②退職日の時点で傷病手当金を受けているか、受けられる状態(働けない+待期3日がすんでいる)であること、③退職日に出勤していないことが必要なため、退職前に段取りを整えられるかで大きく変わります(申請書の提出自体は退職後でも可能です。申請時期・手続きは加入先の健康保険にご確認ください)。各制度には要件があり「必ずもらえる」ものではありません。診断・就労可否の判断は医師が行うものです。

療養中で働けない間、失業保険はどうすればいいですか?

失業保険(基本手当)は「働ける状態で求職している人」への給付のため、療養中で働けない間は受給できません。病気などで引き続き30日以上働けないときは、受給期間延長を申請すると受給の権利を最長3年延長して保存できます(本来の受給期間は原則、離職日の翌日から1年間)。受給期間(離職日の翌日から1年)内に回復して受け取り切れる見込みなら延長は不要ですが、療養が長引く場合の権利保全として、働けない状態が30日続いたら申請しておくのが基本です。

精神障害者保健福祉手帳があると失業保険は変わりますか?

精神障害者保健福祉手帳を持っている人は、失業保険の「就職困難者」に該当する可能性があります(離職時点の状態等を踏まえた個別判断で、最終判断はハローワークが行います)。就職困難者と判断された場合の所定給付日数は、被保険者期間1年以上で45歳未満は300日、45歳以上65歳未満は360日と、一般の自己都合離職(90〜150日)と比べて大幅に長くなります。手帳の申請には初診日から6ヶ月以上経過した時点の診断書が必要とされているため、該当しそうな人は主治医と申請時期を相談してください。

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出典(公的機関)

※ 本記事の内容は一般的な制度の解説であり、個別の受給可否・支給金額を保証するものではありません。実際の判断は加入する健康保険・ハローワークにご確認ください。

※ 金額・日数はすべて概算・一例です。診断・就労可否の判断は医師が行うものであり、 各制度の適用は加入する健康保険・ハローワーク・市区町村・年金事務所の判断によります。必ず各窓口にご確認ください。