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退職金の税金はいくら?
退職所得控除の計算方法と早見表

公開日 ・ 最終更新日 ・ 読む時間 約8分

執筆: やめどきナビ編集部

30秒でわかる結論

  • 退職金の税金は「退職所得控除を引いた残りの半分にだけ課税」という、給与よりかなり優遇された仕組み(分離課税)
  • 退職所得控除は勤続20年以下: 40万円×勤続年数(最低80万円)、20年超: 800万円+70万円×(勤続年数−20年)。1年未満の端数は1年に切り上げ
  • 勤続10・20・30年 × 退職金500万・1,000万・2,000万円の計算例つき早見表を用意しました(下記へ)。勤続年数によっては税金がゼロになることも珍しくありません
  • 会社に「退職所得の受給に関する申告書」を出せば源泉徴収で完結。出さないと一律20.42%が源泉徴収され、確定申告での精算が必要
  • 勤続5年以下の退職には2022年から「2分の1」が一部使えない特例あり。金額はすべて概算であり、正確な税額は税務署・税理士にご確認ください

退職金の税金は「3つ」かかるが、優遇されている

退職金(退職手当等)には、所得税・復興特別所得税(所得税額の2.1%。2037年まで)・住民税(10%)がかかります。 ただし退職金は長年の勤労への報償のため、給与とは別の計算(分離課税)で次の2段階の優遇があります。

  1. 退職所得控除: 勤続年数に応じた大きな非課税枠を先に差し引く
  2. 2分の1課税: 控除後の残額の半分だけが課税対象になる

退職金が退職所得控除の範囲に収まる場合(例: 勤続20年・退職金500万円)は税金ゼロになります。

計算3ステップ

ステップ1: 退職所得控除額を出す

勤続年数退職所得控除額
20年以下40万円×勤続年数(80万円に満たない場合は80万円)
20年超800万円+70万円×(勤続年数−20年)
  • 勤続年数の1年未満の端数は切り上げます(例: 9年3ヶ月→10年)
もっとくわしく(障害者になったことが原因の退職の場合)

障害者になったことが直接の原因で退職した場合は、上記の退職所得控除額に100万円を加算します(国税庁タックスアンサーNo.1420)。

ステップ2: 課税退職所得金額を出す

課税退職所得金額 =(退職金の収入金額 − 退職所得控除額)× 1/2(1,000円未満切捨て)

退職金が控除額以下なら、課税退職所得金額は0円=税金はかかりません。

ステップ3: 税率を掛ける

  • 所得税: 課税退職所得金額に所得税の速算表(5%〜45%の累進税率)を適用し、その税額に復興特別所得税2.1%を上乗せ
  • 住民税: 課税退職所得金額×10%(市町村民税6%+道府県民税4%)

いずれも原則として退職金の支払時に会社が計算して天引き(源泉徴収・特別徴収)するため、 後述の申告書を出していれば自分で申告する必要は原則ありません。

計算例の早見表(勤続10・20・30年×退職金500万〜2,000万円)

(いずれも他の退職手当等の受給や控除調整がない場合の機械的な概算例です。所得税は国税庁の速算表〈タックスアンサーNo.2260〉に復興特別所得税2.1%を上乗せし、住民税10%とあわせた税額合計を1,000円未満四捨五入で示しています)

勤続10年(退職所得控除400万円)

退職金500万円退職金1,000万円退職金2,000万円
課税退職所得金額50万円300万円800万円
所得税+復興特別所得税約2.6万円約20.7万円約122.9万円
住民税(10%)5万円30万円80万円
税額合計(目安)約7.6万円約50.7万円約202.9万円

勤続20年(退職所得控除800万円)

退職金500万円退職金1,000万円退職金2,000万円
課税退職所得金額0円100万円600万円
所得税+復興特別所得税0円約5.1万円約78.9万円
住民税(10%)0円10万円60万円
税額合計(目安)0円約15.1万円約138.9万円

勤続30年(退職所得控除1,500万円)

退職金500万円退職金1,000万円退職金2,000万円
課税退職所得金額0円0円250万円
所得税+復興特別所得税0円0円約15.6万円
住民税(10%)0円0円25万円
税額合計(目安)0円0円約40.6万円

住民税は課税退職所得金額×10%(都道府県民税・市町村民税)の概算で、法定の100円未満切捨て等の端数処理は反映していません。表の金額は1,000円単位に丸めた概算です。

  • 控除額が退職金以上になるマスは課税退職所得金額が0円=税金ゼロです
  • 同じ退職金額でも勤続年数が長いほど税額は大きく下がります(2,000万円で勤続10年約202.9万円、30年約40.6万円)

2022年からの「短期退職手当等」の特例に注意

勤続年数が5年以下の退職金(役員等以外)は「短期退職手当等」と呼ばれ、 2022年(令和4年)1月1日以降に受け取るものから、控除後の残額のうち300万円を超える部分には2分の1課税が適用されません(国税庁タックスアンサーNo.2740)。

控除後の残額が300万円以下なら従来どおり全額に1/2が使えます。役員等としての勤続が5年以下の「特定役員退職手当等」は、金額にかかわらず1/2課税自体が適用されません。

端数・障害退職・短期・特定役員の計算例

次の4要素で控除額や2分の1の扱いが変わります。

ケース退職所得控除額(計算過程)課税退職所得金額税額合計の目安
勤続9年3か月・退職金500万円端数は1日でも1年に切り上げて10年。40万円×10年=400万円(500万−400万)×1/2=50万円約7.6万円(9年のままなら課税70万円で約10.6万円)
障害者になったことが直接の原因で退職・勤続10年・600万円40万円×10年+加算100万円=500万円(600万−500万)×1/2=50万円約7.6万円(加算なしなら課税100万円で約15.1万円)
短期退職手当等(役員等以外・勤続5年)・600万円40万円×5年=200万円控除後400万円のうち300万円は1/2、超える100万円は全額: 150万+100万=250万円約40.6万円(全額1/2なら課税200万円で約30.5万円)
特定役員退職手当等(役員等としての勤続5年)・1,000万円40万円×5年=200万円1,000万−200万=800万円(1/2なし)約202.9万円

障害退職の加算は「障害者になったことに直接基因して退職」した場合に限られます(所得税法第30条第6項)。

「退職所得の受給に関する申告書」を必ず出す

会社から渡される「退職所得の受給に関する申告書」は、上記の優遇計算をしてもらうための書類です。

申告書の提出源泉徴収のされ方
提出した控除・1/2を反映した税額が天引きされ、原則それで完結(確定申告不要)
提出しなかった控除を無視して収入金額×一律20.42%が源泉徴収される。払いすぎ分は確定申告(退職所得の申告)で精算が必要
注意: 例えば勤続20年・退職金1,000万円の人(上記早見表)が申告書を出し忘れると、源泉徴収は1,000万円×20.42%=約204万円。 本来の税額(所得税+復興特別所得税は約5.1万円)との差額は確定申告しないと戻ってきません。退職手続きの書類の中に必ず含めてもらいましょう。

なお住民税は申告書の提出有無にかかわらず、支払時に特別徴収されます。

申告書の書き方と、確定申告が有利になる例

様式は「退職所得の受給に関する申告書 兼 退職所得申告書」(2026年1月1日以後用)。提出先は税務署ではなく退職金を支払う会社、期限は支払を受ける時までです(所得税法第203条)。

  1. A欄: 退職日・一般/障害の区分・勤続期間を記入

    勤続期間は会社が記入するのが一般的です。障害退職なら該当欄に印と障害の事実を書きます。
  2. 同じ年・前年以前に受けた他の退職手当等を記入

    同じ年の分は「退職所得の源泉徴収票」を添付。前年以前は一般の退職手当等が4年内、2026年1月1日以後に受けた確定拠出年金の一時金は9年内が対象で、今回の勤続期間と重なる期間も記入します(所得税法施行令第70条)。書き漏らした分の徴収不足は確定申告では精算できません(国税庁 質疑応答事例)。
  3. 出さなかった(20.42%で引かれた)場合は確定申告で精算

    翌年2月16日〜3月15日に「退職所得の源泉徴収票」を手元に分離課税用の欄へ記入。還付だけの申告は翌年1月1日から5年間可(国税庁No.2030)。

申告書を出していても、退職した年の給与が少なく所得控除が余る場合は確定申告が有利です。所得控除は総所得金額→山林所得→退職所得の順に控除するため(所得税法第87条第2項)、 余り48万円で課税退職所得300万円が252万円になると、所得税+復興特別所得税は約20.7万円→約15.8万円で約4.9万円の還付が目安。事業・不動産所得の赤字の損益通算(第69条)も同様です。

住民税は「翌年」ではなく受け取り時に天引き

毎年の住民税は前年所得への後払いですが、退職金の住民税だけは例外で、 支払時に10%(市町村民税6%+道府県民税4%。1/2適用後の課税退職所得金額に対して)が天引きされて完結します(現年分離課税)。翌年どっと来ることは原則ありません。

一方、給与に対する住民税の残額と翌年6月からの新年度分は退職後に来ます(退職後の住民税の記事)。

iDeCo・企業型DC・小規模企業共済との重複調整

iDeCo・企業型DCの一時金や小規模企業共済の共済金(一括受取)も退職手当等とみなされ(所得税法第31条)、会社の退職金と同じ退職所得控除の枠を使います。 「iDeCoは別枠」は誤解で、受け取る年と順番で調整が決まります(2026年9月時点の施行令第70条)。

受け取り方退職所得控除の扱い
同じ年に両方合算して1つの退職所得。控除は最も長い勤続(加入)期間で計算し、重複しない期間だけ加算(国税庁No.2735)
先にDC一時金 → 後で退職金2026年1月1日以後に受けたDC一時金は前年以前9年内なら重複期間分を差し引く(2025年までの分は4年内)
先に退職金 → 後でDC一時金前年以前19年内と調整。小規模企業共済・前職の退職金など一般の退職手当等どうしは4年内

計算例: 勤続30年・退職金1,500万円と、iDeCo(加入15年・期間は勤続と全部重複)の一時金400万円を同じ年に受けた場合

控除額: 最も長い期間=勤続30年 → 800万円+70万円×10年=1,500万円(加入15年は重複のため加算なし)

課税退職所得金額: (1,500万円+400万円−1,500万円)×1/2=200万円 → 所得税+復興特別所得税(200万円×10%−97,500円)×1.021≒10.5万円+住民税20万円=約30.5万円

調整対象外の間隔を空けてiDeCoを先に受ければ、400万円≦控除600万円(40万円×15年)、1,500万円≦控除1,500万円で、いずれも0円です。 ただしこれは控除の枠の計算だけを示したもので、実際にその順番で受け取れるかは、iDeCoの受給開始年齢(原則60歳以降)や会社の退職金の支給時期で決まります。実行できるかは自分の年齢・退職時期を当てはめて別途確認してください。

勤続期間と重ならない加入期間は控除に加算できます。令和9年分以後は防衛特別所得税が加わる予定(国税庁)のため、数年先の受け取りはその時点の最新情報で確認してください。

こんなときは税務署・税理士へ

上の重複調整に当てはまる人や、一般・短期・特定役員の退職手当等が同じ年に混在する人は、「退職所得の源泉徴収票」を持って税務署(無料相談)や税理士へ。

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よくある質問

退職金に税金はかかりますか?いくらぐらいですか?

退職金(退職所得)には所得税・復興特別所得税・住民税がかかりますが、「退職所得控除を引いた残りの半分にだけ課税」という、給与よりかなり優遇された仕組み(分離課税)です。控除額は勤続20年以下なら40万円×勤続年数(最低80万円)、20年超は800万円+70万円×(勤続年数−20年)です。例えば、他の退職手当等の受給や控除の調整がない場合、勤続10年なら400万円まで、勤続20年なら800万円まで税金はかかりません。控除額を超えた場合の目安は本文の早見表(勤続10・20・30年×退職金500万・1,000万・2,000万円)をご覧ください。金額は概算であり、正確な税額は税務署・税理士にご確認ください。

退職金2,000万円の税金はいくらですか?

勤続年数によって大きく変わります。他の退職手当等の受給や控除調整がない場合の概算では、勤続10年(控除400万円)なら税額合計は約202.9万円、勤続20年(控除800万円)なら約138.9万円、勤続30年(控除1,500万円)なら約40.6万円が目安です。いずれも課税退職所得金額((退職金−控除額)×1/2)に所得税の速算表と住民税10%を適用して計算しています。詳しい内訳は本文の早見表をご覧ください。金額はすべて概算であり、正確な税額は税務署・税理士にご確認ください。

「退職所得の受給に関する申告書」を出さないとどうなりますか?

退職所得控除を無視して、収入金額×一律20.42%が源泉徴収されます。払いすぎた分は確定申告(退職所得の申告)をしないと戻ってきません。提出していれば、控除・2分の1課税を反映した税額が天引きされ、原則それで完結します(確定申告不要)。なお住民税は申告書の提出有無にかかわらず支払時に特別徴収されますが、その10%は退職所得控除と2分の1を適用した後の課税退職所得金額に対する税率(市町村民税6%+道府県民税4%)であり、退職金の総額に10%かかるわけではありません。

退職金の住民税は翌年に請求されますか?

原則ありません。退職金の住民税は毎年の住民税とは別枠(現年分離課税)で、退職金の支払時に10%(2分の1適用後の課税退職所得金額に対して)が天引きされて完結します。一方、給与に対する住民税の残額と翌年6月からの新年度分は退職後に届くため、そちらへの備えは必要です。

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出典(公的機関)

※ 本記事は一般的な制度の解説であり、個別の税額を保証するものではありません。 実際の税額は退職金の内訳・他の所得・所得控除・税制改正等によって変わるため、 勤務先の源泉徴収票の確認とあわせて、税務署または税理士にご確認ください。